法人・個人事業主の工具、資産除却・経費処理の考え方
事業で使っていた電動工具を売るかどうかは、機械の状態だけでは決まりません。帳簿にどう載っているかで、売った時の処理が変わります。この記事は、法人と個人事業主が工具を手放す時の会計の考え方を、一般論として説明します。
具体的な仕訳と税額は、会社の規模や申告の方法で変わります。実際に処理する前に、顧問の税理士か税務署の相談窓口で確認してください。
工具は買った時の扱いで、手放す時の処理が変わる
売却や廃棄の処理は、買った時に帳簿へどう載せたかで決まります。大きく分けて3つの型があります。
- 買った年に全額を経費にした(少額の工具)
- まとめて3年で均等に経費にした(一括償却資産)
- 固定資産として登録し、毎年少しずつ経費にしている(減価償却資産)
少額減価償却資産と中小企業の特例には、取得価額と年間の上限があります。金額の線は税制改正で動くため、国税庁の最新の案内で確認してください。
手元の帳簿か固定資産台帳を開き、売りたい工具が上の3つのどれにあたるかを先に見ます。型番と取得日で台帳を引けば分かります。台帳に載っていない工具は、買った年に経費で落としている可能性が高い工具です。
売る時の考え方:帳簿価額と売却額の差が損益になる
固定資産として台帳にある工具を売ると、差額が損益になります。
- 帳簿価額より高く売れた場合:差額が売却益
- 帳簿価額より安く売れた場合:差額が売却損
- 帳簿価額と同額で売れた場合:損益なし
帳簿価額は、取得価額から、これまでの減価償却費を引いた残りです。購入から数年たつと、帳簿上はかなり小さい数字になっています。そのため、中古市場の価格が低くても、帳簿価額がもっと低ければ売却益が出ます。逆の場合もあります。
法人の場合、売却益は利益に含まれ、売却損は費用になります。個人事業主の場合は、事業用資産の売却による所得の区分が、事業所得とは別になることがあります。区分は取得の経緯や保有期間で変わるため、申告前に確認してください。
売却益が出ても、利益が出ていない年なら、実際に払う税が増えないことがあります。逆に黒字の年に売却損が出れば、その年の税を減らす方向に働きます。ただし、売却時期を税のために動かすかどうかは、工具が実際に要らなくなったかを優先して決めるほうが無難です。
捨てる時の考え方:除却損と処分費用
動かなくなった工具や、売れない古い工具を廃棄する場合は、除却損という処理になります。
台帳に帳簿価額が残っている工具を捨てると、その残りが除却損として費用になります。帳簿価額がゼロなら、除却損は出ません。廃棄にかかった処分費用は、別に経費として扱います。
除却損を計上するには、実際に使えなくなった、または捨てた事実を示す必要があります。税務調査で聞かれた時のために、次の3つを残しておくと安心です。
- 廃棄した日付と、廃棄した工具の型番
- 廃棄の理由(故障、修理不能、使う予定がない等)
- 処分業者の領収書、または引き取り時の伝票
故障品の売却可否は、動かない・壊れた工具(ジャンク品)は売れるかにまとめています。捨てる前に売れないかを見ると、除却損にしかならなかった工具に、売却額がつくことがあります。
売却額が小さくても、記録は残す
工具1本の売却額は、小さいことが多いです。それでも売却の記録を残します。
個人事業主が事業用の工具を売った場合、売却額が小さくても、事業の収入として整理するのか別の所得として整理するのかを、記録の段階で決めておく必要があります。法人は売却額が小さくても、帳簿の処理は同じです。
売却時に集める書類は、次のとおりです。
- 買取業者の査定書または買取明細(日付、金額、業者名)
- 売った工具の型番が分かる写真または一覧
- 振込の記録、または現金受領の控え
- 購入時の領収書(取得価額の証明になる)
買取明細に工具1本ずつの金額が出ない業者もあります。複数の工具をまとめて売る場合は、台帳との対応が取れる明細をもらえるか、事前に聞いてください。業者選びは複数メーカーの工具をまとめて売る時の業者選びも参考になります。
消費税と、個人の工具との混在に注意する
課税事業者の場合、事業用の工具の売却は消費税の課税対象です。売却額に消費税が含まれる扱いになるため、税込か税抜かを買取明細で確認してください。免税事業者の場合は、消費税の処理は不要です。
もうひとつ注意が要るのは、事業用と私用の混在です。個人事業主の場合、同じ電動工具を仕事にも趣味にも使っていると、どちらの資産か曖昧になりがちです。台帳に載せていない工具は、原則として私用の持ち物として扱われます。私用の工具を売った場合の税の考え方は、工具を売った時、確定申告は必要?税金の基礎知識に書いています。
廃業や事業の縮小に合わせて、工具をまとめて処分する場合は、廃業する職人は、工具をどう整理するかも合わせてご覧ください。
売る前にやる順番
手順は次のとおりです。
- 台帳か帳簿を開き、売る工具が少額資産、一括償却資産、固定資産のどれかを確認する
- 固定資産なら、現在の帳簿価額を台帳で確認する
- 買取の見積もりを取り、帳簿価額より高いか低いかを見る
- 売却益・売却損の見込みを、顧問の税理士に伝えて処理を確認する
- 売却後に明細と振込記録を台帳の隣に保存する
見積もりを先に取ると、売るか使い続けるかの判断材料が増えます。帳簿価額が大きく残った工具は、安く売ると売却損が出ます。使い続けて償却を終えてから売る手もあります。
工具相場ドットコムは、公開されている価格を出典つきで並べる中立の相場データベースです。売るかどうかを決める前に、帳簿価額と中古市場の相場を並べて見る材料として使ってください。
よくある質問
Q. 買った年に全額経費にした工具は、売却額を収入に入れる必要がありますか。
台帳に載っていない工具でも、事業用に使っていたなら、売却額は事業の収入として扱うことが多いです。ただし、扱いは法人か個人か、申告方法によって変わります。判断に迷う場合は、税理士に相談してください。
Q. 帳簿価額がゼロの工具を、1円で売ってもよいのですか。
売ること自体はできます。帳簿価額がゼロなら、売却額の全額が売却益として扱われます。売却額が小さくても、記録は残してください。身内への極端な安値売却は、時価との差を指摘されることがあるため、第三者の買取業者に出す形が無難です。
Q. 一括償却資産にした工具を3年以内に売ったら、どうなりますか。
一括償却資産は、売却や廃棄をしても、残りの償却を続ける扱いが基本です。除却損として一括で落とす処理は、通常は認められません。処理の詳細は税理士に確認してください。
Q. 工具を複数まとめて売ったとき、明細は1本ずつ必要ですか。
台帳と照らして処理するなら、1本ずつの金額が分かる明細が望ましいです。まとめた金額だけの明細を受け取った場合は、買取業者に内訳を出してもらえるか聞いてください。出せない場合は、台帳に載る資産ごとに取得価額で按分する方法がありますが、按分の仕方は税理士に確認してください。
Q. 廃棄と売却では、どちらを選ぶほうが経理上は楽ですか。
売却は買取明細という証拠が残り、廃棄は処分業者の伝票と廃棄理由の記録が要ります。どちらも記録が必要という点では同じです。売れる工具なら、売却のほうが除却の事実確認を求められにくい面があります。